右手に海を見ながら H1を走り続けるとKalanianaole Hwy.(72号線)へと続く。 空港やWaikikiの喧騒を抜け出し、Aina Haina, Wailupe, Niu Valleyを抜けるとHawaii Kaiはもうすぐだ。 身体から一気に緊張が溶け出していく。 空港から続くこの道は、そのまま「人間らしさ」への道となっていた。
この写真はWailupe(ワイルピ)あたり。 風にそよぐやしの木と晴れた空が僕を迎えてくれた。 多くの観光客を尻目に僕は本当の地元の人が住むエリアへと向かっていた。
しばらくはRoydenも僕も久しぶりに会った照れくささからどうしたらよいか分からないでいた。 「元気だった?」「うん。 なんとか。」「君は?」「俺は元気さ!」少しそんな言葉を交わし、気持ちが落ち着いてくると、Roydenが突然大声を上げた。 「やったぁ! ルイが一緒だぁ! ルイ! ルイ!」
照れくさかったけど、めちゃくちゃ嬉しかった。 こいつはこんなに喜んでくれている。 俺だって同じ。 いやむしろ俺の方が嬉しいに違いない。 でも、それを僕は表現しきれずにいた。 自分の気持ちを素直に表現して、相手の気持ちを掴める彼がまぶしかった。
もっと気持ちを伝え合いたい。 素直にそう思った。 仕事のためじゃなく、彼らにもっと近づくために英語をもっと学びたいと思った。
しばらくすると、車はHawaii Kaiに入った。 右に自家用ボートなどの発着場を見て左折。 いよいよ住宅街へと入っていく。 周り全てのものが新鮮だった。 道端に並ぶ素敵な家々。 家にヤシの木や色鮮やかな南国の花々が争うように咲き誇っていた。
バス停で待つ地元の学生の姿や遠くに見える丘の緑・・・ 全てが美しく輝いていた。 僕は再びここに訪れた。 今は隣にハワイの友人がいてついに本当のハワイに足を踏み入れたのだ・・・。 彼に出会えたことの幸運に感謝せずにいられなかった。
Hawaii Kaiに入って何度か右折、左折を繰り返し、行き止まりの道の終点のちょっと手前にRoydenの家があった。 華美過ぎない自然に溶け込む素敵な家だtった。 いよいよRoydenの家族に会うのかと思うと緊張してきた。
ガレージに頭から車を突っ込むと、Roydenはエンジンを切り、車を降りて、トランクに入れた僕の大きな荷物を抱えて家のドアを開けていた。 そして中に入って荷物を降ろすとすぐ戻り、"Come inside, come inside. No shame!(中に入れ、中に入れ。 恥ずかしがるなよ!)"と声をかけてくれた。
どうやら、家族は外出中らしい。 ちょっと肩の荷が下りた。 勧められるまま、僕は家の中へと入った。 今では当たり前だが、ハワイの人は日本人のように玄関で靴を脱ぎ、家では裸足で生活する。 アメリカ本土では靴のまま家で生活するのが一般的だが、ここでは違うのだ。 玄関の脇に日本から持ってきたビーチサンダルを置きスニーカーを脱いで中に入った。
中は思ったより暗かったが、広いリビングとそこにあるカウチがいかにも快適そうだった。 リビングの中央にはキッチンがあり、アメリカンサイズの冷蔵庫がデンとおかれていた。 僕を奥の部屋へと招きいれ、「今日からお前はこの部屋を自由に使ってくれ」という。
その部屋はRoydenの部屋だった。 「えっ? じゃあお前はどうするの?」「心配いらないよ。 俺はリビングで寝るから。」「マジで!? 今から10日以上ここにいるんだぜ」「大丈夫、大丈夫。 いつも夜遅くまでリビングでテレビを見ててそのまま寝ちゃってるから、同じ事なんだ。」「そうならいいけど・・・」
仮にそれが本当であっても、朝早く仕事に出かける家族に彼は起こされてしまうはずだった。 自分は我慢しても友達に与える。 自分の前にまず仲間や家族を想う・・・ これもまた本当のAlohaだった。
トイレやシャワーなどの場所を教えてくれたあとは、キッチンへ行き、冷蔵庫を開けるとどこに何があるかを説明し、「喉が渇いたり腹が減ったら自分の家のように気楽に冷蔵庫を開けて中にあるものを飲んだり食べたりしてくれよな。 遠慮はなしだぜ。」と言ってくれた。 今日からの10日間、僕をOhana(家族)として迎えてくれたのだ。
そういうと、「何が飲みたい? ビール?」「いや、俺は酒は飲めないんだ。」「本当に!? バドライト最高なのにな。 じゃあ、コーク? ジュース? アイスティー? ジュースは、グァバ&マンゴー、パイナップル&オレンジとか・・・ 何がいい? 遠慮するなって言ってるだろ?」「じゃあ、グァバのジュースくれる?」「グラスに氷はいる?」「うん、いやどっちでも・・・」「よし、じゃあ入れるか?」「うん。そうだね。」
「腹は減ってないか? 何か作ってやるよ。」「うん少し。」「じゃあちょっと待っててくれ。」そういうと冷蔵庫を覗き、いくつかの食材を手にすると恐ろしく手際よく何かを調理し始めた。 レストランの厨房で働いていたことがあるからだった。
とにかく至れり尽くせりなのだ。 僕に何かをしてやりたい。 喜ばせたいという彼の純粋な気持ちが痛いほど伝わってくる。
ハワイに着いて、1~2時間たっただけで、ハワイとハワイの友人は僕の心をわしづかみにしていた。 僕はどっぷりとハワイの虜になっていった・・・
続く
A hui hou
心からの「おもてなし」ですねぇ。歓迎の気持ちを、自分の全てで伝える。私もそんな人間になりたい。
投稿情報: miu miu | 2005年12 月 7日 (水) 21:55