カウアイのRoydenの従兄弟の家。 広々とした敷地の牧場だった。 ハワイの牧場? オアフでは想像もできなかった。 しかし、アメリカ合衆国最大の個人所有の牧場はハワイ島にある。 ハワイのカウボーイ達はPaniolo(パニオロ)と呼ばれていて、観光客が知る世界とは全く次元の違う世界で生きている。 海からは遠く離れた山間部の牧場では、ストーブが必要なほど冷え込む。 ハワイでは雪も降り、スキーだってできるのだ。 渡航50回を超える僕でさえまだまだ未知の世界がある。 ハワイの懐の深さにただ脱帽するしかない・・・
たらふく食べて、飲んで談笑を楽しんでいるとさすがに眠くなってきた。 奥のベッドルームを僕に使わせてくれるという。 Roydenは従兄弟との久しぶりの再会にまだしばらく話が続いているようだ。
僕は、一足先に寝ることにした。 部屋は木造のシンプルな味のある雰囲気だった。 夜になると恐ろしく冷え込んできた。 ハワイって常夏の島だと思っていたが・・・。 窓から外を見上げると、星が地上に落ちて来そうなほど瞬いていた・・・。
何か心の奥にキュンとしたものが走った。 こんなに暖かい友人達に囲まれているのに、何故か寂しくなるような星のまたたきだった。
寒さに震えながらもいつか僕は深い眠りについていた。
朝、寒さで目が覚めた。 外はもう明るい。 従兄弟はもう起きだして仕事に出かけて行ったようだった。 窓の外からは南国らしい鳥のさえずりが聞こえてきてリラックスさせられた。
リビングに出るともうRoydenがおきだしていた。 「ルイ、おはよう! どうだよく寝られたか?」「うん。 よく寝られたよ。 ちょっと寒かったけど。」「遠慮しないでブランケットよこせって言えばいいのに。」「うん。 まあでも平気だったから。」
「ところで、きょうはどうする?」「今日の夕方の便でホノルルに帰るから、それまで波乗りしよう。 今日は、俺のお勧めのスポットに連れて行ってやるよ。 白い砂浜が続く綺麗なビーチなんだけど、個人の所有地の先だから本当に人が少なくて最高だよ。 彼女とビーチでエッチするのが夢なんだ」「しょうがねぇなぁ・・・」
などとRoydenと彼らしい馬鹿話をしながら、二人でRoydenが作った朝食を食べ、今日のセッションの準備に取り掛かった。 クーラーボックスにいっぱい氷をつめた。
車の板を乗せ、昨日とは異なる道を走った。 途中小さな店によるとRoyden用にビール数本と、僕用にコークやジュースを買い、クーラーボックスに入れた。 さらにしばらく走ると、「ここから個人所有地。 立ち入り禁止。」の看板があった。 Roydenは少し躊躇したあと、そのまま車を前に進めた。
「確かこの先なんだよ。」さらに両側に砂糖キビが植えられた未舗装の道を走ると、道が砂山で行き止まりになっていて、数台の車が駐車していた。 「ここ、ここ!」
「さぁ、板や貴重品も持ってビーチまで歩くぞ! 車の中に貴重品を絶対残したらだめだ。 ここは日本じゃないからな。」そうなのだ。 こんなにアロハにあふれた島だが、盗品は日本の比べ物にならないほど多い。 Roydenのような悪ガキがいっぱいいるからだ。
Roydenが小さな身体で重くなったクーラーボックスを担ぎ、僕がRoydenの板も持とうとしたが、彼は自分の荷物は全部持って、僕には持たせてくれなかった。砂山を超えると、眼前に白く広大な砂浜が広がっていた。
海には頭を超えるサイズ、恐らくセットで2メートル程度のエクセレントウェイブが割れていた。 ローカルらしきハワイアンが10人ほど波乗りを楽しんでいる。 この中に入って波を分けてもらえるのかちょっと心配になった。
ビーチで波乗りを終えて休んでいるハワイアンがいる。 その一人はハワイで初めてRoyden達とサンディースで会ったとき、車にサーフボードを積んでくれた、身長2メートルくらいのブララだった。
Roydenもブララもお互いに気づき、ブララは僕にも気づいて、一緒に座って話に花が咲いた。 Roydenは途中で買ってきた飲み物を彼らにあげた。 ブララと一緒にいたハワイアンはビールが好みだったが、ブララはソフトドリンクがいいと言う。
Roydenは申し訳なさそうに僕用に買った飲み物をあげてもいいか?と聞いてきた。 僕は当然OKと答えた。 4人でラジカセから流れてくるボブ・マーリィのレゲエを聴きながら海を眺めてクルーズした。
ブララはレゲエにあわせて、遠くを見る目をしてギターを弾くしぐさをしながら歌っている。 僕はその姿に見とれてしまった。 本物だった。
しばらくクルーズしてから、僕らは海に入ることにした。 ブララ達は帰って行った。
続く
A hui hou.
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