カウアイでの花火のセッティングをしているグレッグ。 僕とおそろいのTシャツを着ている。 彼は物凄い体力の持ち主で疲れ知らず。 常に動きまくってもへたばらない。 セッティングの合間に彼女のマキちゃんを放っておかずに心遣いを見せる。 僕にもサンドイッチを買ってきたら良いとか言って気遣いを見せてくれる。 心優しい僕のハワイアン・ブラだ。
花火は盛大に打ち上げられ、観衆からもヤンヤの喝采を浴びた。 僕は何も手伝っておらず、ただ特等席でスタッフ面をして花火を堪能しただけだったが、観衆の喝采がとても誇らしかった。
「こんな素晴らしいエンターテインメントを成功させたのは、俺のブラ(兄弟)なんだぞ!」って皆に自慢したい気分だった。
花火が終了すると僕がサンドイッチを買ったビーチの前の店のお母さんが、ランスとグレッグにサンドイッチの差し入れを持って来てくれた。 花火に対するお礼だ。 こんな心遣いにもアロハ・スピリットが感じられる。
お母さんが去る頃には観衆も三々五々帰って行き、まだ余韻を楽しみながら小さな花火をする人たちが若干いたが、ビーチは一気に静寂と暗闇を取り戻した。 そうここは他でもないカウアイだ。 東京はもとより、ワイキキとは違う。 人工的な明かりの量が圧倒的に少ないのだ。
だからこそハワイには世界でも有数の巨大な望遠鏡があるほどだ。 他の陸地からも遠いため、星の観測には最高に恵まれた環境なのだ。
その暗闇に包まれたビーチで頼りになるのは、写真のグレッグがつけている小さな懐中電灯とランスのトラックのヘッドライトだけだ。 ここからは僕にも出番が回ってきた。
宴の後の片付けが始まるのだ。 数日前に写真でご紹介したような、花火の発射用の筒やそれを固定する木枠、花火につないだコードなどを全て撤去するのだ。 木枠を固定するベルトをはずし、三人でひとつひとつトラックに積んでいく。
いくら冬の夜とは言え、さすがにものの5分も経たないうちに全身汗だくになってきた。 しかもビーチの砂がそれにくっつき身体がジャリジャリしてくる。 でもそういった苦労を共にすることで僕らはさらに結びつきを深くしていくのだ。 やっと僕も花火のスタッフになった。
全ての木枠を積み終えるには1時間もかかってしまった。 最後はコードを束ねるのだが、これが砂だらけで結構重い。 それで全て終了。 ランスが借りているトラック、乗用車、そしてマキちゃんと僕が乗ってきた乗用車の3台でホテルまで帰ることになった。
今夜はグレッグの部屋に居候だ。 だからホテル代もかからない。 車3台で男は僕を入れて3人。 いくらオアフに住んでいても、女の子には深夜のカウアイの道は運転させられない。 そこで3台目の乗用車は僕が運転していくことになった。 左ハンドルのマニュアルで真っ暗なカウアイの道だが、ちょっとワクワクするドライブだった。
ホテルまでは30分くらいかかっただろうか。 結構遠い場所にある2階建ての小さなホテルだったが、周囲はワイキキとは比べ物にならない静けさと、平和な雰囲気に包まれていた。 これぞハワイだ。
部屋に入るとすぐにもベッドに倒れこみたい衝動にかられたが、それ以上に一刻も早く汗と砂を落としたかった。 ここでもグレッグが僕に先にシャワーを浴びろと言う。 自分よりまず周りの人なのだ。 彼の方が長い間働いていたから汗もかいているだろうに・・・。
僕はマキちゃんに先に入るように促すが、彼女も僕に先に入るように勧める。 なぜ日本にいるとこういう心遣いができないのだろう? 社会が競争を仕掛けてくるからだろうか? まず自分を優先にしないと生き残れないような脅迫観念に迫られているのかもしれない。
結局僕が先にシャワーを浴び、その後に彼らが入った。 全員さっぱりすると花火の話、明日のカウアイ観光の話などで三人でひとしきり盛り上がった。 そこでもグレッグはさっきもらったサンドイッチを勧めてくる。 僕はそのサンドイッチはグレッグがもらったものだから「腹がいっぱいだ」と言って断った。
僕は日本のそれも東京で仕事をしているとどんどん自分がアグレッシブになって行くのがわかる。 人に対する優しさは、ビジネスの世界では弱さになりかねない。 仕事を通じて人間的成長を勝ち得る事は無謀な夢物語なのだろか?
日本でのアグレッシブさを矯正するためにも、僕にはハワイが必要だ。 いや、ハワイのブラ達が必要なのだ。 僕は彼らといることで、人間性を取り戻していくことができる。 人間が本来最も大切にすべき「優しさ=Aloha」を取り戻していくのだ。 日本からハワイへの道はそのまま人間らしさへの道なのだ。
人は誰も優しくされたい生き物だ。 どんな強い者も病気になったり、いつか年老いたりする。 優しさと愛情は人間が根源的に必要なもののはずだ。 僕は自分の周りにの仲間や共感してくれる人達と優しさや愛情をシェアできる環境を作っていきたい。
A hui hou.
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